クビアカツヤカミキリ

害虫

学名

Aromia bungii

英名

red-necked longhorn

概要

クビアカツヤカミキリの自然分布国は中国、台湾、朝鮮半島、ベトナム北部ですが、日本では2012年に愛知県で最初に被害が確認された後、2019年現在では、愛知県、埼玉県、徳島県、群馬県、大阪府、東京都、栃木県、奈良県の8都府県の順にて被害が確認されており、一部の地域では定着が見られたことから、2018年1月に外来生物法に基づく特定外来生物に指定されました。
クビアカツヤカミキリが公園や街路樹等のサクラを加害すると、景観が損なわれるだけでなく、倒木等のリスクも懸念されます。

形態

幼虫(写真1.)の体長は成熟ステージによって大きさが異なり、米粒程度から4cmを超える大きさまで様々です。幼虫は樹木の内部で形成層や木部を食害しながら約2~3年かけて除々に成長していき、樹木の深部で蛹室形成後、蛹(写真2.)となります。
成虫(写真3.)の体長は2~4cm程度、体全体は黒く光っていますが、胴と頭の間の首に相当する部位が赤色であることが特徴です。雌雄を見分けるポイントは、雄の触角は体長より長く、雌の触角は体長よりも短い点です。
 

幼虫
写真1. 幼虫
蛹
写真2. 蛹
成虫(左が雌、右側が雄)
写真3. 成虫(左が雌、右側が雄)

生態

クビアカツヤカミキリは、バラ科樹木の生木を加害するため、サクラを初めとして、ウメやモモ等の果樹園でも深刻な被害をもたらします。

幼虫は4~10月頃まで活発に樹木内で摂食活動を行い、大量のフラス(幼虫の糞と木屑が混ざったもの、写真4.)を排出します。他のカミキリムシと比べてフラスの量が非常に多いことがクビアカツヤカミキリによる加害であるかを判断するための重要なポイントとなります。幼虫は樹木内で2~3年かけて成長すると推察されており、蛹を経て羽化した成虫は、樹皮表面の脱出孔(写真5.)から外へ飛び出し、間もなく成虫は産卵を行います。幼虫の生育年数等生態には未解明の部分も多いです。

株元に大量に排出されたフラス
写真4. 株元に大量に排出されたフラス
うどん状に固まるのが特徴です。
樹幹表面の成虫脱出孔
写真5. 樹幹表面の成虫脱出孔
赤矢印の箇所から羽化した成虫が出てきます。

幼虫は若齢の頃は樹木内の表層部位にいる傾向がありますが(写真6.)、老齢になるにつれ樹幹内の中心部へと穿孔していき、形成層、更に奥にある木部へと穿孔していきます。樹幹内では2~3年間をかけて成長し、蛹室形成後、蛹となります。幼虫は羽化後脱出用の脱出孔を蛹になる前に準備を行い、脱出予定孔が外部から目に見えないように薄い膜を形成します(写真7.)。

激しい食害を受けて枯死したサクラの樹幹表層部
写真6. 激しい食害を受けて枯死したサクラの樹幹表層部
クビアカツヤカミキリの幼虫が穿孔した跡の坑道が見られます。
蛹の出入り口
写真7. 蛹の出入り口
蛹室の出入り口にフラスと白い硬質の蓋が観察されました。
 

2年目で成虫になるものと3年目で成虫になるものが存在すると推察されており、卵自体は毎年産み付けられるため、結果として同時期に複数の成長ステージの幼虫が穿孔していることが多いです。樹木の葉を食害するチョウ目害虫とは全く生態が異なり、クビアカツヤカミキリの幼虫は外に現れないため薬剤散布による防除は非常に困難です。

羽化のピークは6月中旬~7月中旬頃ですが、8月頃まで成虫の発生が見られます。

成虫は凹凸のある幹や主枝の割れ目に産卵します。そのため、サクラの中でも特に表面に凹凸が多く見られる老木が産卵に適した環境であることから、文化財等に指定されている国内の有名な古木に対しても被害が起こりうる可能性があります。

産み付けられた卵は約10日前後で孵化します。クビアカツヤカミキリの雌は複数回に渡り産卵を行い、1頭あたり生涯平均で約350個、最大で約1000個産卵します。他のカミキリムシ類と比べて繁殖能力が非常に高く、一旦クビアカツヤカミキリが侵入すると、そのエリアで被害が急速に広がることが問題となっています。また、1本の被害樹に対して同時に多数の幼虫が穿孔していることが多く、多いときには、被害樹1本当たりに数十頭も穿孔していることもあるため、被害が一気に進みます。
加害された樹木は形成層を食害されることにより衰弱し、やがて枯死します。枯死まで至らない場合でも、被害によって衰弱したサクラでは開花数が激減し、倒木の危険性が高まります。

クビアカツヤカミキリの生活環
図1. クビアカツヤカミキリの生活環