ヒメクグ

カヤツリグサ科雑草

学名

Cyperus brevifolius var. leiolepis
 

説明

カヤツリグサ科の多年生雑草で北海道~九州北部に分布します。湿った場所に発生しやすく、高さ10-30cmの群落を形成します。葉は狭い線形で柔らかく、揉むと独特の甘い香りがします。また葉縁と裏面に刺し毛が生えるため、葉先から根の側に向かって触ると少しザラザラした触感がします。基部の葉は短く、葉鞘は褐色または赤褐色を帯びることがあります。

区分

多年生カヤツリグサ科
 

主な発生場所

日当たりの良い湿った場所を好むため、ラフやフェアウェイの排水路や散水栓周り、また排水性が悪く土壌水分の高い場所に発生しやすくなります。土壌の種類を選びません。
 

特徴

ヒメクグが芝地に発生した場合、旺盛な根茎伸張と種子生産により著しい増殖を示し、また芝生に似た平伏形の草型をしているため、刈り込み条件下でも地上部は完全に除去されず生き残りやすくなります。ヒメクグは地中に塊茎を形成しませんが根茎の休眠芽からの再生力が強く、刈り込みを繰り返しても容易には根絶できません。地上部(茎)は地中の根茎の各節から多数生じます。
 

生態

生育期間は5-11月で、伸張した根茎休眠芽からの増殖に加え、種子による繁殖も行います。春に根茎から芽を出して叢生し、7-10月にかけて茎の先に小穂が球状に集まった緑色の花穂を1個つけます。根茎の伸長による繁殖力は著しく、1年間で直径30-60cmの群落に成長します。


ヒメクグ根茎

芝生地に群生した発生初期のヒメクグ

発生環境

ヒメクグは種子の生産量が多く、主に動物、人間などにより伝播されます。また、芝生地においてはバーチカットなどにより切断された根茎のそれぞれから発生が起こり、発生箇所が広がる場合があります。
 

発生消長


発生時期の表記について
 :発生
地域や生育環境によっては発生時期、開花時期などが異なることがあります。
 

シンジェンタからのおすすめ防除法

  • コース内だけでなく、ラフやコース周辺地の雑草を放置すると結実して有力な伝播源となるためコース周りも可能な限り管理を行ないます。
  • 湿った場所に発生しやすいことから排水性を良くする事で発生を抑えることができます。
  • 発生したら大きくなる前に早めの駆除を実施します。なお、スルホニルウレア系の除草剤を用いる場合、低薬量の処理で枯れ残りが生じると、かえって草勢(根茎の休眠芽からの再生)が強くなる場合があるため、発生箇所ではきっちりとした投下薬量で完全防除を目指します。
  • 種子からの発生に対しては土壌処理除草剤での防除が可能です。
  • 開花期である7-10月頃の刈り込みを随時行なうことで種子の形成を抑え、種子由来の新しい株の発生を抑えます。
  • 発生が甚だしい場合は必要に応じて抜き取りによる防除が必要になります。
     

雑草コラム

ヒメクグの見分けにくい類似種としては、一年生のカヤツリグサやタマガヤツリ、多年生のハマスゲなどが挙げられます。ヒメクグとこれらの類似種とを見分けるための最も簡単な方法として、ヒメクグは茎葉部を揉んで匂いをかぐと独特の甘くツーンとした香りがするのに対して、他の種は匂いがしないことが挙げられます。また、これ以外の相違点については以下の表に示しました。

ヒメクグ類似種の相違点

ヒメクグ類似種の相違点