雪腐小粒菌核病
病害
病原菌
Typhula incarnata (雪腐褐色小粒菌核病)
Typhula ishikariensis (雪腐黒色小粒菌核病)
芝種
ベントグラス、ブルーグラス、ライグラス等の寒地型芝草全般(スズメノカタビラも感染します)
病徴
雪腐小粒菌核病は融雪時に明確に分かります。パッチは麦わら色~灰白色で直径約10-20cmの大きさで、融合し不定形となります。雪腐小粒菌核病は、パッチ内の葉に形成される菌核の色調により大きく雪腐褐色小粒菌核病と雪腐黒色小粒菌核病の2つに大別できます。
雪腐褐色小粒菌核病は褐色(アズキ色)の菌核を形成し、雪腐黒色小粒菌核病は黒色の菌核を形成します。通常、両病害ともに植物の葉を枯らし、根・匍匐茎は侵しませんが、発病が激しい場合は根・匍匐茎が侵されてしまうために裸地となります。一般に雪腐褐色小粒菌核病の方が雪腐黒色小粒菌核病よりも被害が軽く、回復が早いことが多いです。
雪腐褐色小粒菌核病の褐色菌核
雪腐黒色小粒菌核病の黒色菌核
融雪1カ月後の様子 白矢印が黒色小粒、青矢印が褐色小粒雪腐病を示す
全面に黒色小粒が発生したベントグラスティ
病原菌の生態
雪腐小粒菌核病菌は晩秋の冷涼・過湿気候(10-18℃)で菌核から発芽します。雪腐褐色小粒菌核病菌はこの時期に子実体(キノコ)を形成しやすいですが、雪腐黒色小粒菌核病菌は子実体を作りにくいことが知られています。子実体から放出される胞子による分散よりも菌核が第一次伝染源としては有力なため、造成したてのグリーンでの雪腐小粒菌核病の発生は少ないことが多いです。また、雪腐褐色小粒菌核病菌と雪腐黒色小粒菌核病菌の最適菌糸伸長温度はそれぞれ10℃と5℃です。実際に発病するのは積雪下で更に低温の条件ですが、これは病原菌に対する拮抗菌の活動が鈍くなることと、植物の病原菌に対する抵抗力が衰えるためだと考えられています。
秋期に発生した褐色小粒菌核病菌の子実体
発生環境
雪腐小粒菌核病には一般的に長期の根雪が必要な条件となってきます。雪腐褐色小粒菌核病は65日以上、雪腐黒色小粒菌核病は100日以上の根雪日数を必要とします。
管理のコツ
- 休眠直前の速効性肥料の施用は避けますが、早秋の遅効性肥料は春に植物の立ち上がりを助け、また雪腐病被害からの回復を早めるために有効です。
- 高レベルのカリを与えます。
- 風避けフェンス等により吹き溜まりのような過剰な根雪期間となる地帯をなくします。
- 凍害の心配がなければ除雪し、根雪期間を短くします。
- サッチの量を減らします。
- 根雪になる前に予防的に殺菌剤を散布します。
発生時期
発生時期の表記について
■ :多発生 ■ :発生
シンジェンタからのお奨め防除法
- 雪腐病は今回紹介した雪腐小粒菌核病以外に、ミクロドキウムによる紅色雪腐病、ピシウムによる褐色雪腐病、スクレロティニアによる雪腐大粒菌核病があります。これらの病害は一つのグリーンで単独発生するよりも、同時に発生する場合が多いです。このため雪腐病の防除にあたって、そのゴルフ場で発生する雪腐病をカバーする対処法が必要となります。
- 従来の防除方法は県や地域によっては、使用規制を受けている場合があります。
- ヘリテージを利用した組み合わせ防除
- 紅色雪腐病に対して登録のあるヘリテージと、雪腐小粒菌核病に登録のある薬剤とを組み合わせることで、これらの雪腐病が混合発生する場所でバランスよく効果を発揮します。
- 散布後の雨に強いため、根雪時期の見きわめにゆとりがもてます。
- 芝の汚れが少ないため、オープン中に計画的な雪腐剤の散布が可能になります。
矢印はヘリテージ0.125gとA剤1.0gとの組み合せ処理区
根雪27日前処理(弊社社内試験)