ケラ

害虫

学名

Gryllotalpa orientalis

英名

Mole Cricket

形態

成虫の体長は約30mm。全身が褐色で全身をビロードのような短い毛が覆っています。成虫は翅を持ち、前翅は後翅より短くオスには音を出すための発音器官があります。後部には2本の長い尾毛を持っています。
特徴的なのはモグラの前足のように穴掘りに適した形に発達した前脚です。前脚だけでなく、頭部を含む体の前半分の卵形の形状やビロード状の短い毛なども、地中を掘り進むのに適した形態と言えます。

分布

ケラは3つの属に分類されますが、日本に生息するGryllotalpa属のケラは地中海沿岸の地域からアジアおよびオーストラリアの一部に分布します。日本では北海道から八重山諸島まで広く分布しています。

発生消長と特徴

年1回の発生がほとんどですが、北日本などの寒い地域では2年に1回の発生となることもあります。
ケラは一般的に2月から5月にかけて飛び回って活動しますが、そのピークは3月と4月です。春の活動は、ケラが外灯に誘われて集まる夕方がもっとも顕著となります。ケラは一般的に、日暮れ後2時間以内の時間帯に飛び回ることが多く、降雨後の暖かく澄み渡った夜を最も好みます。オスのケラはこの時期、交尾に最適な場所を探しています。場所が決まると、オスはメスに「求愛」します。メスは一般的に交尾した場所の近くで産卵します。卵期間は20日前後です。ケラは雑食性で、ミミズ、昆虫の死骸、植物の根や葉などを食べながら成長します。夜行性で、昼間はやや深い場所にある生息孔に潜んでおり、夜間に地表近くに縦横に走らせた餌を探すトンネルを移動しながら摂食します。多くは成虫で越冬しますが、遅い時期に孵化したものは幼虫で越冬し、越冬時は30cmから1mの深さにまでもぐります。

被害

ゴルフ場では、ベントグリーンのふちの部分や、排水の良くないフェアウェイなどターフの表層にトンネルを掘る被害が主です。ベントグリーンへの播種時やフェアウェイなどのオーバーシードの時期にケラの発生があると、発芽した幼苗が根付かず不均一な状況になります。

防除のコツ

登録のある殺虫剤を処理することによって、芝に対する被害を抑えることができますが、この時のポイントは2つあります。
1つ目は散布タイミングです。防除は小さい時期のケラ幼虫(体長が13mm未満)を対象とすべきで、小さい幼虫の防除は大きくなった時よりもかなり容易です。幼虫は4月から6月初旬にかけて成長します。ただこの時期、幼虫は小さく、芝も盛んに成長しているため発見するのは困難です。
2つ目は散布水量です。地中の深い場所に棲息しているケラには、1L未満の水量では十分な効果が発揮されません。薬剤を地中深い所に到達させるために雨中散布などは効果的な散布方法と言えます。
被害の見られる箇所は毎年ほぼ同様なので、梅雨から初夏の幼虫時期の被害が現れる前に薬剤を処理することをお薦めします。幼虫期はケラの大きさが小さい事と生息場所が比較的浅いという事がその理由です。
耕種的な防除では、排水の悪い箇所の改善することが挙げられます。


ケラの発生消長と芝地に対する被害