チガヤシロオカイガラムシ

害虫

学名

Antonina graminis Maskell

形態

成虫:体長は3mm前後。あずき色の袋状で脚は退化している。体表は白いロウ状物質で覆われている。
幼虫:1令幼虫の体長は0.5-0.9mm。3対の脚を持ち移動する。


地際の分げつ部に定着している成虫

ロウ状物質に覆われた成虫(左)
と孵化幼虫(右)

ロウ状物質の中の成虫

分布

カメムシ目の昆虫で、定着した幼虫および成虫は芝草の汁液を吸汁することによって被害を与えます。被害は主に夏から秋に現れることが多く、特に乾燥している箇所での被害が目立ちます。加害している虫そのものを発見しづらい上、乾燥害やその他の害虫による被害、病害と間違いやすいので対応が遅れることがあります。特に、被害初期では赤褐色を伴うパッチ状の症状になることもあるため病害と見間違う可能性が高いです。


被害写真1:
パッチ状の病害に見える

被害写真2:
乾燥害やその他の虫害に見える

発生消長と特徴

単性生殖を営むこの虫は卵胎生によって増殖し、孵化幼虫の発生ピークは一般的に5月下旬から6月下旬および7月下旬から8月下旬の年2回です(地域によって異なることもあります)。成虫は平均150個の卵を体内で孵化させます。1令幼虫は3対の脚を持ち、秒速1cm程度の早さで活発に移動します。2、3令幼虫になると芝草の地際の分げつ部などに定着し、脚は退化します。幼虫は気温の高い時期には2ヶ月程度で成虫になりますが、低温時期には3~4ヶ月を要することがあります。

防除のコツ

見た目の被害が乾燥害や病害と間違いやすいため、まず被害がチガヤシロオカイガラムシによるものであることを確認することが必要です。被害箇所をホールカッターで抜き取り、芝をほぐして地際の分げつ部分をよく観察してください。本文にも記述してありますが、図鑑などでは「白いロウ状物質に覆われている」とあります。しかし実際には土やすすのような黒っぽい汚れが付着しており、真っ白な状態ではありません。
薬剤による散布適期は仔虫の発生時期(孵化後の早い時期)です。この時期を過ぎると、芝生に定着して体の外側がロウ状物質で覆われるため薬剤の効果が低下します。日本では孵化幼虫の発生ピークが5月下旬から6月下旬および7月下旬から8月下旬の年2回ですので、散布適期を逸しないようにして下さい。一般的には1回目の発生時期である5月下旬から6月に処理し、2回目の発生を抑えることが上手な防除方法になります。被害の激しい場合は7月下旬から8月の2回目の発生時期にも薬剤を処理することをお薦めします。