スプリング デッドスポット(仮称)

病害

病原菌

Ophiosphaerella korrae 、O. herpotricha Gaeumannomyces graminis 等が海外で報告されている

芝種

バミューダグラス

病徴

バミューダグラスが美しい緑色となる初夏に、いつまでも円形状に休眠している個所が見られる場合、スプリングデッドスポットが疑われます。スプリングデッドスポットは、色抜けした淡黄色の円形のパッチとして現れ、直径は30センチに及びます。病害に感染した芝の地際部、根と匍匐茎(ほふくけい)は、こげ茶色や黒色に変色します。盛夏になるとパッチの周囲から健全植物が覆ってくるので回復したように見えます。


初夏に見られたパッチ
スプリングデッドスポット

パッチ内部は萌芽する様子が認められない
(パッチ内部の緑色部は雑草)

病原菌の生態

日中の温度が21~24℃になる晩夏から初秋にかけて根・匍匐茎(ほふくけい)に感染が始まり、10~15℃になると感染がより活発となります。病原菌の生育速度は非常に遅く、発病に至るまでに2~3年を要するとも言われています。一旦発生すると毎年同じ個所に発病は観察される傾向にあり、5~6年間の発病が観察された後に自然に発病しなくなることもあるようです。これは発病衰退現象と考えられており、スプリングデッドスポットに対する拮抗菌が集積することによるものと考えられます。

発生環境

スプリングデッドスポットは、春や秋の冷涼湿潤な気候を好み、気温が日常的に16℃を下回る11月の気候が適しています。この病害は、通常サッチの厚みが1cmを超え、水はけが悪く、カリウムのレベルが低い場所に発生しやすい傾向です。晩秋に速効性の窒素分を与えるとバミューダグラスの休眠を遅らせることになるため、スプリングデッドスポットに罹りやすくなります。また、バミューダグラスの耐寒性とスプリングデッドスポットの耐病性については密接な関係があると考えられています。

管理のコツ

  • 夏の終わりから秋にかけて、速効タイプの窒素施肥を控えます。
  • 春から8月の初旬にかけて、アンモニア態の窒素肥料を使用します。
  • この病害に感染した芝では、雑草を除去し、スプリングデッドスポットからの回復を促進させます。
  • 中~高レベルのリン、カリ、微量要素を与え、根の活性を高めます。
  • 芝の水はけを改善します。
  • サッチの量を減らします。
  • 耐寒性のあるハイブリッドバミューダグラスに切り替えます。
  • できる限り低刈を避け、刈高を上げます。
  • アメリカでは9月下旬から10月にかけて、予防目的に殺菌剤が散布されていますが、日本では登録のある薬剤がありません。

発生時期


発生時期の表記について
 :多発生  :発生

シンジェンタからのお奨め防除法

  • 全面バミューダグラスを植栽しているコースでなくても、部分的にバミューダグラスが混入しているコースは多いと思いますので、大被害がなくても多くのコースで発生している病害です。
  • これまでにスプリングデッドスポットに対する登録薬剤はなく、明確な防除法が確立されてないのが現状です。また病名登録もされておりません。海外の情報では薬剤防除が必ずしも効果的ではないことが述べられています。これはスプリングデッドスポットに関与する病原菌が複数存在することと、それに対する薬剤の感受性が異なることが予想されます。日本における病原菌種の解明が望まれます。
  • 薬剤防除を難しくしている問題に散布時期があります。明確な散布時期は確立されていませんが、薬剤を使用する場合には、秋に感染する病害ですのでバミューダグラスが休眠に入る前に散布する必要があります。