紅色雪腐病(フザリウムパッチ)
病害
病原菌
Microdochium nivale
芝種
ベントグラス、ブルーグラス、ライグラスを含む寒地型芝草全般(スズメノカタビラも感染します)
病徴
紅色雪腐病は、ほぼ円形で水浸状のパッチを形成します。色は、黄色、黄褐色またはサーモンピンク色で、直径は2.5から30センチです。これらのパッチは融合することがあり、縁が淡いピンク色になります。パッチの色彩は土壌水分によって変化するため、融雪直後は鮮やかなピンク色ですが時間が経つと白色に変化していきます。パッチ中心部は健全な場合があり、パッチ周縁部には白またはピンク色の菌糸が確認できることがあります。胞子が刈り込み機械に付いて運ばれ、病害が筋状に発生することもあります。積雪のない関西・中国・九州といった地域でも紅色雪腐病は発生します。

無積雪下で発生したパッチ

積雪下で発生したパッチ
病原菌の生態
紅色雪腐病菌は16℃以下から凍結寸前の地温で活動し、特に水分の多い過湿環境を好みます。高温・乾燥といった本病原菌に不適切な環境では植物体や残さなどで腐生生活を営みます。再び適した環境となると分生子と呼ばれる三日月型の胞子が風や水によって広がり新たに感染します。
また、これまで病原菌名が Microdochium nivale 、 Fusarium nivale 、 Monographella nivalis といった具合にいくつかの名前で呼ばれていました。昔この病原菌は、フザリウムのグループに入れられていましたが、分類学者から見て形態・性質的にフザリウムとは違うことが指摘されてグループから外されてしまいました。そのため現在はフザリウムニバーレとは呼びません。またモノグラフェラという名前は学問的に言うとミクロドキウムの完全世代名であり、有性生殖を行う時の形態を指します。ゴルフ場では有性生殖世代が見つかっておらず、無性生殖世代(不完全世代)が大半であることからミクロドキウムの名前を使うことが一般的です。

Microdochium nivale の分生子
発生環境
紅色雪腐病の好適温度は16℃未満です。発病に雪は不要で、雪に覆われてなくても発病します。根雪前や融雪後などの過湿土壌、霧や冷たい雨が続き、0-8℃の曇天であると発生が激しくなります。また植物はサッチが多くマット気味な場合に被害が激しいことが多いです。
管理のコツ
- 芝の休眠が始まるまでは、定期的に芝を刈り込みます。
- 芝の休眠前の晩秋に、水溶性窒素源の多施肥は控えます。
- カリを多めに与えます。
- 養分バランスのとれた土壌を維持します。
- アルカリ性の土壌はこの病害を進行させるため、石灰やアルカリ性資材の使用は控えます。
- サッチ量を減らします。
- 低木、風よけ、スノーフェンスを使用して、過度な積雪を防ぎます。
- 春になったら芝の上から雪を取り除きます。
- 秋に接触性殺菌剤や浸透性殺菌剤を使用し、雪に覆われる時期が過ぎたら再度使用します。
- 日陰と葉の湿り気は、この病害を深刻化させる重要な要因でもあります。
発生時期

発生時期の表記について
■ :多発生 ■ :発生
シンジェンタからのお奨め防除法
積雪地域では根雪前の時期に雪の予定が雨に変わることも多く、苦慮されている方々が多いようです。浸透移行性に優れる ヘリテージは降雨等の天候の影響を受けにくい薬剤ですので計画的な散布が可能となります。