ドライスポット

病害

病原菌

なし
 

芝種

砂質土壌に植栽されている全ての芝草
 

病徴

床土に含まれる砂の粒子自体が撥水性を生じるようになり、土壌が過乾燥状態になるため、芝が枯れてしまいます。また、ひとたび撥水性を生じてしまうと通常の潅水によって植物に充分な水分を供給するのは困難となります。撥水性が生じている土壌は5cmまでの深さであることが多く、7.5cmまでに達すると深刻な症状となります。
 

発生原因

ドライスポットは砂粒子が有機物にコーティングされることにより土壌が撥水性を生じることが原因です。有機物を含まない砂ではドライスポットは発生しません。植物体やサッチ、床土に混和させたピートモスなどの未熟な有機物が微生物によって分解されることにより、細かな有機物が発生します。極度な乾燥条件になると、この有機物が砂粒子に張り付いてしまう現象が起きます。
 

発生環境

芝草の床土に含まれる砂の割合が高ければ高いほどドライスポットの発生する危険性は高くなります。この現象は芝草に限らず他の作物でも起こることが知られています。またグリーンの局所的な場所において問題となることが多く、発生する場所は各グリーンによって決まっている場合が多いです。さらに、造成してから約半年以上を経たグリーンで問題となることが多いようです。
ドライスポットの発生には有機物含量・砂の粒径・芝草の種類・保水性・土壌pHなどが関係するかもしれません。砂:ピートモスが85:15の比である土壌において最もドライスポットの発達が速く、土壌の粒径では粗い粒子(0.5-2.0mm)の方が細かい粒子(0.1-0.5mm)よりも発生し易いです。また、芝草の種類ではベントグラス>バミューダグラス>トールフェスク>ゾイシアグラスの順にドライスポットが発生し易く、シルトを含む保水性に富む土壌では発生が緩やかで、pH8.5-10の土壌では砂粒子への有機物の付着が緩やかであったという報告もあります。
必ず言えることは、いずれのサンドグリーンでもある程度のドライスポットが徐々に発達していく、ということです。
 

管理のコツ

  • 適切な潅水をし、極度の乾湿サイクルを避けます。
  • 保水剤を使用するなどして保水力を持たせます。
  • バーチカルやコアリングをして未成熟な有機物を少なくします。
  • 土壌が撥水性を生じたならば、浸透剤を使用して砂粒子に付着している有機物を取り除きます。
     

発生時期


発生時期の表記について
 :多発生  :発生
 

シンジェンタからのお奨め防除法

過散水をすることはドライスポットを防げますが、藻・苔の発生や肥料・薬剤の流亡など異なる大きな問題につながります。ドライスポットを避ける潅水を工夫しながら実施し、芝の密度を保ち藻・苔の侵入を防ぐことが大切です。
 

最近の話題

一見ドライスポットだと見間違ってしまう症状の炭疽病があります。この写真はドライスポットだと思って潅水をし続けることにより被害が拡大してしまいました。面倒ですが必ず根の状態を確認して乾燥しているかどうかをチェックすることが肝心です。床土が湿っている場合は病虫害の可能性があります。
フェアリーリング病の中には土壌の撥水性を伴うものがあります。撥水性を生じたフェアリーリング病に対して、先ず浸透剤を散布した後に充分な後散 水をして撥水性を取り除きます。その後、フェアリーリング病に有効な殺菌剤を使用し、病徴の進展が無くなったら肥料・資材などで芽数を上げて回復を図ります。撥水性のフェアリーリング病は治療に時間・コストを要します。毎年問題となるゴルフ場では予防的に対処することが望ましいです。


リング内側が撥水性を帯びた症状

リング外周部が撥水性を帯びた症状

ドライスポットと見間違えた炭疽病