スズメノカタビラ

イネ科雑草

学名

Poa annua L.
 

説明

代表的なイネ科の一年生雑草で、線形平滑で尖った葉を持ち、通常5-30cmほどの草丈に成長します。ゴルフ場に発生する雑草の中で最も重要な雑草の1つです。
 

区分

一年生イネ科(越年生)
 

主な発生場所

通常、日当たりの良い場所、湿った土壌、酸性土壌を好み、芝生地の温度と水分条件が出芽と生育に適していることからベントグラス、ペレニアルライグラス、バミューダグラス、ケンタッキーブルーグラス、コウライシバなど多くの芝草中に発生します。また、耐陰性、耐寒性、耐湿性ともに優れており、樹木の下などの日陰や停滞水地帯、排水路などの湿地にも発生します。
 

特徴

踏みつけ、低刈り条件に極めて強く、刈り込み頻度の高いグリーンでも生育可能です。


低刈り条件下で生育するスズメノカタビラ

また、低刈り条件下においても生育可能な上、3-4mmの穂でも完熟した種子を形成することができます。グリーンやティーなどの低刈り条件下では、刈り込みにより草丈は小さく維持されますが、生育期間に応じて葉齢、分げつは進展していきます


低刈り条件下の株と発生初期の植物体

スズメノカタビラは種内変異が大きく、刈り込み頻度に対応してフェアウェイ由来の集団とグリーン由来の集団では草型や開花期、出穂までの期間が大きく異なることがあります。またグリーン内においても草丈の非常に小さい集団、やや大型だが出穂が極めて早い集団などの発生が報告されています。
 

生態

主に秋から春に発生し、生育とともに分げつが進み、株を形成して越冬します。その後、春から初夏(3-6月)にかけて開花して、結実後は一年生の草種であるため株は枯死します。また、条件が整えば春以降でも次々に発生が見られるとともに、小さな個体でも開花します。暖地では極寒気を除いてほぼ一年中花が見られます。


越冬時のスズメノカタビラの様子

スズメノカタビラ花弁

低刈り条件下で冬季に出穂した個体(2007年2月撮影)

スズメノカタビラは土壌中の窒素が多いと栄養生長が続いて花序形成が遅れ、リン酸が多いと出穂形成が促進されます。
 

発生環境

生育環境によって種子の休眠の深さは異なりますが、一般に極めて休眠は浅く、採取直後の種子でも発芽率が50%を超えます。種子は5-35℃で発芽可能となり、生育適温は15-21℃です。なお、21℃以上になると生育が衰え、30℃以上の気温が数日続くと枯死する個体もあります。種子は好光性であるため発生深度が浅く、地面に直射日光があたる条件で適度な水分があればすぐに発芽します。(発生可能深度は最大4cmまで、土壌中における種子の寿命は5年以上)


スズメノカタビラ種子

低温時(7~13℃)における窒素多用や極端な低刈り、酸性、固結土壌条件下において生育が促進されます。
 

発生消長


発生時期の表記について
■  :多発生   :発生
温度、湿度、光など条件が整えば、一年中どの時期でも発生、生育、開花が可能です。
 

シンジェンタからのおすすめ防除法

  • 酸性土壌を好むため、土壌が酸性に偏りすぎないように注意します。
  • 低温時の窒素多用はスズメノカタビラの占を促進するので極力避けます。
  • 耐湿性が強いことから土壌の排水性を改善することで停滞水地帯での優占化を抑えられます。
  • 出穂に影響するのでスズメノカタビラ優占地では春先のリン酸の施用を控えます。
  • 処理層を安定させて除草剤の効果を発揮させるためにスイーパーがけ、バケット刈りを実施して刈りカスを除去し、サッチの集積を防ぎます。
  • 発生した個体には早い段階で茎葉処理除草剤を散布し、生育および結実を抑えます。
  • 条件が合えば一年中発生するため、春秋の発芽前土壌処理剤の散布で発芽を抑えます。
  • 施肥により発芽が促進されるため、発芽前土壌処理剤を散布した後に施肥を実施します。もしくは、施肥を行なってスズメノカタビラの発芽を揃えてから防除します。
     

最近の話題

スズメノカタビラには一年生としてスズメノカタビラ、類似種のツクシスズメノカタビラ、多年生のツルスズメノカタビラ、オオスズメノカタビラ、ケンタッキーブルーグラスなどの発生が見られます。複数年生育した個体は刈り込み条件下において草丈が低く維持されますが、発生初期(1年目)の個体に比べて生育ステージが進んでいるために薬剤を処理した際に枯れ残るケースが見られます。
一年生タイプと多年生タイプの相違点は下記表の通りです。しかし、スズメノカタビラは生育環境による形態の変化が極めて多い草種であるため、一年生タイプでも匍匐型の個体や、多年生匍匐型のタイプでも株立型に近い個体の発生などが確認されています。また、これらの多年生タイプは2-3年を限度として生育しますが、生育環境により一年生となることもあります。ゴルフ場では刈り込みや高温期の潅水が適宜行なわれるため形態変化を起こしやすく、現場における達観調査のみで一年生と多年生を確実に見分けることは困難となります。

表:一年生タイプと多年生タイプの相違点