スジキリヨトウ

害虫

学名

Spodoptera depravata Butler

形態

幼虫は2令程度までは黄緑色を呈していますが、成長するにつれ褐色化してきます。さらに令期が進むと特徴的な半月型の模様が、背部の節ごとに一対ずつ現れます。体長は約3cm程度にまで大きくなります。
成虫は体長約15mm。帯状の黒い3本のギザギザした横縞模様が特徴です。

害虫の生態

芝草などの葉に卵塊として生みつけられた卵は気温にもよりますが、約1週間で孵化し、約1ヶ月間の幼虫期間は地際部に生息し、コウライシバ、ノシバを好食します。蛹期間、成虫の寿命ともに約1週間です。ラフの木陰など刈高の高い場所でノシバやメヒシバなど幅の広い葉に産卵することが多いようです。

防除のコツ

幼虫が大きくなると被害の進行が早くなる上に、薬剤も効きにくくなってしまうため、幼虫の小さいうちに登録薬剤を散布することが重要です。実際には小さい幼虫は見つけにくいので、成虫の持つ強い走光性(光に集まる性質)を利用したライトトラップを用いて、夜間、光に集まってきた成虫を捕殺したり、白い布をスクリーンのようにして光を当て、集まる成虫数を調査したりすることで、幼虫の発生時期を予測できます。さらに、卵塊(右写真)の有無などを目安にすることもできます。刈高を低めにすることによっても、ある程度防除効果はあります。また、同じ系統の薬剤を連用しないことも他の害虫同様、重要です。

虫コラム

現場のゴルフ場で害虫を防除しようと思うと難しい場面がありますが、逆に飼育しようとするとこれがなかなか難しいことが分かりました。
昨年、殺虫剤の社内試験を行うためスジキリヨトウを飼育しました。まず、卵隗の採集ですが、きっちり防除されているゴルフ場のコース内ではあまり見つからないため、防除回数の比較的少ない練習場、もしくは防除機会のほとんど無い施設内の緑化地帯(弊社研究所の芝地ではたくさん見つかりました)で採集しました。採集後容器の中に入れておくと、数日で卵は孵化します。
体長3mmほどの幼虫がいっせいに出てきます。餌となるコウライシバは茎葉を3から5cmに切って容器の中に投入します。2、3日ごとに餌を入れますが、餌が乾燥してしまうと食べませんし、水分が多すぎるとカビが生えます。どちらにしろ、幼虫は次々と死んでいきます。また、採集した卵隗の20%程度は寄生蜂によって寄生されていました。幼虫の飼育がうまくいけば試験の70%は達成です。
飼育中、驚いたのは幼虫の食欲です。みるみる餌が減っていくのが分かりました。大被害が出ることにも納得がいきました。