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ベントグラスの夏越しに向けた対策

昨今の気象(気温、降雨量)は地域によって大きく変動する不安定な状況のため、生育不良、乾燥害、高温障害などのダメージやストレスを受けた芝生が目立つ状況です。さらに病原菌がこの弱った芝生に併発することで被害が拡大したコースもあります。
特に炭疽病とピシウム病は大きく影響していますので、早めの防除が必要です。3つのポイントから夏越し対策をご紹介します。

夏期に見られた被害 1
夏期に見られた被害 2

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更新作業

まずは「猛暑へ対抗するために必要な根圏作り」です。活力ある根圏が夏に受けるストレスを最も軽減できる要素の一つであり、そのためには更新作業を侮ってはいけません。
更新作業は根圏の生育向上や土壌の透水性改善を主たる目標とし、一般的に更新作業回数が年1回よりも2回にした場合、芝の生育が良く、夏越しが順調であるようです。

  • 更新作業のタイミングは気温と芝の活力状態により左右されますが、春、初夏、秋に実施する。(秋期はやや軽度)
  • 更新作業前には作業後の速やかな回復のために粒状肥料を入れる
  • タインについては数回のうち一度はやや大きめのタイン(8~12mm)を使用する

水管理

次に「活力のあるベントグラスを維持するための均一かつ適切な水管理」です。これは前述の更新作業と深い関連があり、根圏の生育にとっては夏期の過剰散水や排水不良がマイナス要因に働くことがあります。
気温が上昇するにつれて、散水頻度が増すかもしれません。水管理においては時間帯と散水量、散水の分布がキーポイントとなります。

  • 朝3時、4時にグリーンの顔を見ながらスプリンクラーで散水する
  • グリーン刈りが始まる少なくとも1時間前に散水は終えておく(これを守らないと意外と軸刈りをしてしまうことがあります)
  • 面倒でも部分的に手撒きで散水を実施して、均一な土壌水分量を維持させる。(スプリンクラー任せの散水は過剰に散水される場所と逆に十分に水が行き届かない場所ができてしまいます)

早朝の散水は一日の間でもっとも水温が低く、気温の上昇を制御することに幾分か寄与しているようです。また気化熱により地温の上昇を和らげる働きが期待できます。
特に夕方の過剰な散水はピシウム病や赤焼病をはじめとする病害の発生を助長することとなります。

病害管理

夏期と夏期に向けた病害管理の軸は「夏場に厄介な病害は炭疽病とピシウム病」です。
炭疽病とピシウム病は単独で発生するだけでなく、両者による混合感染も少なくありません。時には細菌病と併発します。診断を誤ったために不適切な殺菌剤を使用して被害が拡大したり、混合感染している病害の片方だけを防除して片方が残ってしまい、十分な回復がみられないまま枯死したりする残念な事例も数多くあります。

  • 炭疽病・ピシウム病を早め(春期)から防除する
  • 予防散布を徹底する
  • 病気の些細な初発を見逃さない

春から梅雨前にかけては一見非常に健全に生育しているように見えることが多いですが、病原菌が潜伏感染しているケースが見られています。
早いうちから定期的な予防散布を行うことで急激な気象・環境変動による病原菌密度の急増を最小限に抑えることが重要です。また少しでも発生が見られたときには早急に対処を行います。

また梅雨明け後は気温が上昇し、病気の発生にも変化が見られます。この時期は菌密度が上昇し潜伏感染もよくみられます。
このような時期には炭疽病・ピシウム病・赤焼病に対する治療効果と予防効果を併せ持ち安定した効果が期待できる薬剤を組み、ローテーション散布を進めていただくことが大切です。

夏期高温時に一度病害を発生させてしまうと、ベントグラスの活力が極端に低下してしまいます。このような状態での殺菌剤散布は病原菌密度を低下させることができますが、芝生のダメージからの回復はかなり遅くなります。
病害によるダメージをきっかけに、追い打ちをかけるような高温、過乾燥、過灌水、プレイヤーによる踏圧等といったストレスによって、ベントグリーンは甚大なダメージを引き起こすと考えられています。

プリモマックスの利用

シンジェンタ社では、トリネキサパックエチルにより芝の徒長防止、密度向上だけでなく、植物ホルモンであるサイトカイニン量の上昇(蒸散抑制や呼吸量を減少に貢献)、非構造性炭水化物量の増加等によって夏期の高温ストレスや乾燥ストレスが軽減されることが報告されています。
猛暑直前もしくは猛暑下での使用は効果的ではなく、猛暑のシーズンが始まる前に予め数回散布しておくことが非常に効果的です。
またプリモマックスは少水量散布可能であるため、予防的に少水量散布に向く殺菌剤(メダリオン等)との組合せも効率的です。

殺菌剤プログラム作成のコツ

体系プログラムの作成方法については下記リンクをご参照ください。
体系防除プログラム作成方法

ピシウム病もしくは赤焼病に登録がある薬剤と作用機作(●は登録有、空欄は未登録)


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炭疽病に登録がある薬剤と作用機作


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